こんにちは!
時代とともに、人も町も風景も移り変わるものですが
失われていくことを惜しむ人々の声が形になっていることもしばしば
今回ご紹介する万葉集は
かつてたしかにあった場所 佐渡にまつわる歌です
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左和多里の 手児にい行き逢ひ
赤駒が 足掻きを速み 言問はず来ぬ
さわたりの てじにいゆきあひ
あかごまが あがきをはやみ こととはずきぬ
作者未詳 巻十四・三五四〇
【現代語訳】
佐渡のところで かわいらしいお嬢さんと出会ったものの
馬の足が速くて 声をかけずに 通り過ぎてしまったよ
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左和多里 という場所は おそらく佐渡村のこと
現在地図上に存在はありませんが
通説によれば1300年以上の歴史があった可能性があるそう
町名が失われることを惜しむ人々の有史により
この歌の歌碑が建てられています
赤駒 とは 赤毛の馬のこと
手児 乙女を意味するこの言葉は 万葉時代は東国の方言だったようですね
お嬢さんに見とれてしまって
手綱を引いて馬を止めることを忘れてしまったようです
声をかけられなかったことがあまりに悔しく
このような歌を残したのだと思うと
かわいらしいです
佐渡という土地があったこと
この歌と歌碑がなければ
今を生きる人々はだれも知ることがなかったでしょう
残そうとした人々の思いに感動しました